追突事故の被害に遭い,頸椎捻挫の治療のため,整形外科への通院を続けています。
治療費は,これまでは加害者が加入していた損害保険会社が病院に直接支払ってくれていました。
しかし,事故から3ヵ月が経過して,保険会社の担当者から,「この程度のケガであれば3ヵ月の治療で十分なはずなので,今月末で治療費の支払いを打ち切ります」と言われてしまいました。どのように対応すればよいのでしょうか。
治療費の打ち切りへの対処法
治療費の打ち切りはなぜ起きるのか
交通事故でケガをして医療機関で治療を受ける場合,その治療費の支払い方法については,とりあえず被害者自身がこれを支払っておいて,後から自賠責保険に被害者請求をして回収したり,加害者が加入している保険会社(任意保険会社)に請求をして支払いを受けるということももちろんできます。
しかし,一般的には,加害者が加入している保険会社(任意保険会社)が窓口となり,その保険会社から医療機関に直接支払いをするという処理が行われています。
支払いをした任意保険会社は,自賠責保険でカバーされる補償範囲については,後から被害者に代わって自賠責保険に求償し,自社の負担額を最小限に抑えようとします。
自賠責保険でカバーされる補償範囲は,後遺症がない場合は120万円でしかありません。
治療期間が長引いて治療費がかさんでくると,この120万円の範囲ではトータルの損害額が収まらなくなる可能性が出てくるため,自社の負担をなるだけ抑えたい任意保険会社が医療機関への治療費の支払いを打ち切ろうとすることがあるのです。
治療費の打ち切りを通告されたら
治療をまだ続ける必要があるかどうかは基本的には治療にあたっている医師が判断すべき事柄です。
したがって,任意保険会社から治療費を打ち切ると言われたら,まずは主治医に治療を続ける必要性についての判断を確認しておく必要があります。
- 症状の改善が見込まれる場合
主治医が治療を続けることにより症状が今より改善する見込みがあると判断しているのであれば,保険会社にそのことを伝え,治療費の支払いを継続するよう要請してみることになります。
その際,具体的な治療見通し(あとどのくらい治療に時間がかかるか)を主治医から保険会社に直接説明してもらうことが望ましいでしょう。主治医の意見を伝えても保険会社が治療費打ち切りの方針を変えてくれない場合は,治療を続けるには治療費をいったん立て替えて支払うほかありません。
この場合,自由診療で治療を続けてしまうと治療費が高額になるため,健康保険を使って通院を続ける方がよいでしょう。立て替え負担した症状固定までの治療費については,後日,任意保険会社に請求することになりますが,必要な治療であったかを保険会社が争ってくると,最終的には裁判で決着をつけなければならなくなることもあります。
施術を受けたことにより治療効果があがっているということをきちんと説明できるかが治療費の支払いを受けるためのポイントになります。 - 治療を続けても症状の改善が見込まれない場合
治療費の打ち切りを通告された時点で主治医の先生もこれ以上治療を続けても症状の改善が見込めないと判断している場合には,後遺障害診断書を主治医に作成してもらい,後遺障害の認定手続を行うことになります。
交通事故で負った傷害がこれ以上治療をしても良くならない状態を「症状固定」と言うのですが,この症状固定日以降に治療を続けても,原則としてその治療費は被害者の自己負担となってしまい,加害者に請求することはできないので注意が必要です。