5 解雇・雇止め事案:解決の流れ

解雇の撤回を求めた結果,会社がこれに応じてくれば,復職後の担当職務,賃金・有給休暇などの労働条件,復職の時期等について会社と交渉を進め,和解を成立させることになります。

会社が解雇を撤回してくれない場合には,解雇が無効であって従業員としての地位をまだ有していることの確認を求めて公的機関に救済を申し立てることになります。

労働局のあっせん

費用をかけずに,自分の力で申し立てをしようとする場合には,各都道府県労働局に設置された紛争調整委員会が行う紛争解決のためのあっせん手続や,都道府県労働委員会が行う個別労使紛争のあっせん手続を利用することが考えられます。
いずれの手続も弁護士や大学教授等の労働問題の専門家が委員となり,労働者,事業主の双方から事情を聴き,紛争の調整を行い,場合によってはあっせん案を提示するという制度です(労働委員会のあっせんは,原則として,公益代表[弁護士等]・労働者代表[労働組合役員等]・使用者代表[会社経営者等]の3人のあっせん員によって行われる点に特徴があります)。

費用がかからないこと,比較的短期間で結論を得られることなどがメリットになりますが,どちらの手続においても会社側にあっせんへの参加を強制させることはできません。
会社側がこの制度による解決を希望しなければ手続は打ち切られてしまいます。

埼玉労働局,埼玉県労働委員会のHPにそれぞれの手続の仕組みが概説されています。

裁判所への申し立て

解雇・雇止め事案の解決を図るには,裁判所の手続を利用することが一般的です。
弁護士に依頼した場合には,通常,①労働審判の申立て,②仮処分の申立て,③民事訴訟の提起のいずれかの手続をとることになります。

このうち,①の労働審判は,2006(平成18)年4月からスタートした個別労使紛争に関する比較的新しい紛争解決手続です。
職業裁判官(1名)と労使双方から選ばれた労働審判員(2名)の合計3名で構成される労働審判委員会のもと,原則として3回以内の期日で,簡易迅速にに労使間の紛争を解決する手続です。
事実関係が込み入った事件や,使用者と激しく対立することが想定される事件などにはこの労働審判は不向きですが,争点がはっきりしている単純な解雇事案については,スピーディーな解決が期待できる労働審判は,使い勝手のよい仕組みであると言えます。

どのような手続を使って解決を図るかについては,よく弁護士と相談するようにしてください。

なお,労働審判は,本人で申立てをすることもできますが,3回という少ない期日で解決を図る仕組みであるため,十分な準備をしてから申立てをする必要があります。
この分野で経験豊富な弁護士に依頼をして手続を進めることをお勧めします。まず,弁護士にご相談ください。