ⅳ 「寄与分」がある場合の相続

寄与分とは?

寄与分とは,共同相続人の中に被相続人の財産の維持又は増加について特別の貢献をした者がいる場合に,その貢献に応じた寄与分を法定相続分に加えて財産を取得させる制度のことです。

寄与分が認められる要件

寄与分が認められるのは,「被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」とされていることからわかるように(民法904条の2),『特別の寄与』があった場合に限られます。
特別の寄与といえるには,次の3つの要件を満たすことが必要です。

① 相続人自らの寄与であること

相続人自らではなく,その関係者(たとえば,雇っている者)による経済的援助等は寄与分が認められる寄与にはならない

② 被相続人との身分関係に基づき通常期待される程度を超える特別の貢献であること

夫婦間の協力扶助義務(民法752条)や親族間の扶養義務(民法877条)の範囲内の介護,家事従事は,寄与分が認められる寄与とはならない。

③ 寄与によって被相続人の財産が維持され,または増加したこと

被相続人の事業について精神的な援助,協力をしていたにとどまり,財産上の効果が生じていない場合には,寄与分が認められる寄与にはならない。

寄与分が認められる類型

寄与分が認められる寄与行為にはいくつかの類型があります。

家業従事型

“被相続人の事業に関する労務の提供”により,被相続人の財産の維持・形成に寄与をするというパターンです。
親の家業を無償で手伝っていた,というようなケースになります。農家や商店などが典型ですが,税理士などの専門職でも,寄与行為とされることがあります。

出資型

“被相続人の事業に関する財産上の給付”により,被相続人の相続の財産の維持・形成に寄与するという類型です。親の事業に資金や不動産を提供するというようなケースです。

療養看護型

“被相続人の療養看護”を行うことにより,被相続人に看護費用等の支出を免れさせ,その結果として,被相続人の相続財産の維持に寄与する類型です。
よく主張される寄与行為ですが,被相続人との関係から当然に期待される程度を超える療養看護が要求されます。

扶養型

相続人が被相続人の生活費等を負担することにより,被相続人が生活費等の支出を免れ,その結果として,被相続人の財産の維持に寄与したといえる類型です。

財産管理型

被相続人の財産を管理し,あるいは,資産の維持費(公租公課など)を負担するなどして,被相続人にその費用負担を免れさせ,その結果,被相続人の財産の維持・管理に寄与したという類型です。

寄与分がある場合の計算方法

寄与分がある場合に各相続人の具体的相続分をどのように求めるかですが,まず,相続開始時の遺産の価額から寄与分を差し引いたものをみなし相続財産とします。
これに法定相続分の割合を乗じて具体的相続分を求めます。寄与者については,これに寄与分を加えた額が具体的相続分となります。

Xは遺産として3000万円を残して死亡しました。Xの相続人は配偶者YとA,B,C3人の子どもです。
Aが生前大病を患ったXの療養看護をしたということで,Aについて5分の1の寄与分が審判で認められました。
この場合,遺産の3000万円はどのように分けられるのでしょうか。

3000万円からその5分の1に相当する600万円を差し引いた2400万円がみなし相続財産となります。
これに各人の法定相続分を乗じるとYが1200万,A,B,Cが各400万円となります。
寄与分がないY,B,Cはこれが具体的相続分となり,寄与者であるAは400万に寄与分の600万を加えた1000万が具体的相続分となります。

2017年11月9日 | カテゴリー : 相続、遺言 | 投稿者 : kawaguchi-saiwai