〔lawyer’ blog〕✍ 囲碁の神様

囲碁の棋士,杉内雅男九段が亡くなられました。97歳でした。本因坊戦の挑戦者に2度なったことはあるものの,大きなタイトルの獲得はないので,一般にはほとんど知られていない方かもしれません。

亡くなるまで現役として第一線で碁を打ち続けました。今月2日に行われた小山栄美六段との対局が最後の対局。この碁は負けでしたが,今年の年間成績は2勝2敗。90代の成績もほぼ打ち分け(勝ち負けが拮抗)だったそうです。昨年3月には15歳の大西竜平初段と対局をして年齢差80歳という記録を作って話題にもなりました。対局がある日は,駒沢公園近くの自宅から日本棋院がある市ヶ谷まで電車で通い,棋院6階の対局室にはエレベーターを使わずに階段を上り下りしていたというのですから驚きです。

杉内九段のあだ名は「囲碁の神様」。“神様”というと白髪で髭を伸ばした好々爺を想像してしまいますが,杉内九段の場合,お年を召されてからの飄々とした風貌からついたのではなく,兵役から復員して囲碁の研究に明け暮れた30代に,その囲碁に打ち込む姿勢の真摯さからつけられたのだそうです。早碁も得意とされていて,私がよく囲碁番組を見ていた頃には,NHK杯などのテレビ棋戦でも活躍されていました。当時,すでに還暦を過ぎていたはずですが,(“神様”には似合わない)妥協のない厳しい手を連発するとても若々しい打ちぶりで,観戦していて小気味良さを感じたものでした。

ただひたすらに道を究めようとする… 凡人には苦しいことばかりではないかと思えてしまいますが,杉内九段にはどんな世界が見えていたのでしょうか。合掌。