4 住民監査請求,住民訴訟

住民監査請求,住民訴訟とは?
住民監査請求とは,住民が,自分が居住している地方自治体の「財務」に関する行為に,違法もしくは不当な点があると認められる場合に,その地方自治体の監査委員に対し監査を求めて,その行為について必要な措置を講ずべきことを請求することができるという権利です。自分が直接の被害をこうむったわけではないけれども,行政機関が税金の無駄遣いをしている,あるいは,しようとしている場合に,監査委員にその是正を求めるというものです。
住民監査請求をしたけれども,監査委員の監査の結果,勧告,措置に不満がある場合には,裁判所に住民訴訟を提起することができます。
こうした,住民監査請求,住民訴訟は,日本の場合には,地方自治体についてだけ認められている仕組みです。

◊ 住民監査請求
=監査請求の対象=
住民監査請求の対象となるのは地方自治体の違法または不当な「財務会計上の行為又は怠る事実」です。

〇 違法または不当な財務会計上の行為

ⅰ)公金の支出
ⅱ)財産(土地、建物、物品など)の取得,管理,処分
ⅲ)契約(工事請負、購入など)の締結,履行
ⅳ)債務その他の義務の負担(借入れなど)
※ 上記の行為が行われることが相当の確実さで予測される場合も含む。
〇 違法または財務会計上の怠る事実
ⅴ)公金の賦課・徴収を怠る事実(市税の徴収を怠るなど)
ⅵ)財産の管理を怠る事実(市有地や市債権の保全管理を怠るなど)

=監査請求の内容=
住民監査請求によってどのような内容の請求ができるかについては,地方自治法第242条第1項で,①当該行為を防止し,又は是正すること,②当該怠る事実を改めること,③当該行為・怠る事実によって当該地方自治体が被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきことの3つとされています。

=期間の制限=
住民監査請求については,正当な理由のない限り,地方自治体の違法・不当な行為があった日から1年以内にこれを行う必要があるとされています(地方自治法第242条第2項)。この期間を徒過した住民監査請求は,適法な請求とはならないため,その住民監査請求も却下されてしまうし,監査請求の却下後に提起される住民訴訟も,適法な監査請求を経ていないという理由で却下されてしまいます。

=住民監査請求の結果=
住民から請求があると60日以内に監査委員による監査(本案審査)が行われます。
審査によって監査請求が要件を欠いていることが判明したときは,請求は「却下」されます。請求に理由がないと判断されたときは,請求は「棄却」されます。これに対して,請求に理由があると認められたときには,監査委員は,議会,首長その他の執行機関または職員に対して,期間を示したうえで必要な措置を講ずるよう勧告するとともに,その勧告の内容を請求人に通知し,かつ,公表することになります(地方自治法第242条第4,5,9項)。

◊ 住民訴訟
住民監査請求をしたけれども,監査委員の監査の結果,勧告内容,あるいは勧告を受けた措置に不満がある場合には,裁判所に住民訴訟を提起することができます。
住民訴訟を提起できるのは,住民監査請求を行った人だけです(監査請求前置主義)。監査請求をせずにいきなり住民訴訟を提起することはできません。また,住民監査請求は適法なものでなければならず,不適法であった場合には,住民訴訟の内容の審査に入らずに却下されることになります。

=住民訴訟の請求内容=
住民監査請求は,違法または不当な財務会計行為(怠る事実)の是正をする仕組みであるのに対し,住民訴訟は,違法な財務会計行為(怠る事実)の是正を求める制度となっています。つまり,違法とまでは言えず不当,ということだと,住民訴訟では勝訴の結論を得られないということになります。
住民訴訟によって行うことができる請求は次の4類型です(地方自治法第242条   の2第1項)。

① 行為の差し止め請求(1号請求)
公金支出の差止めをすることにより,不要な公金の支出を事前に予防することが目的の請求です。
② 行政処分の取消しまたは無効確認請求(2号請求)
公金の支出に関する処分を取消し,もしくは,無効と確認することにより,違法状態の是正を自治体当局に再考させる請求です。
③ 執行機関,職員の怠る事実の違法確認請求(3号請求)
自治体の公金の賦課・徴収,財産管理を怠っている状態が違法であることを確認することにより,自治体の“不作為”による違法状態の是正を自治体当局に促す請求です。
④ 職員等への損害賠償又は不当利得返還請求(4号請求)
自治体の執行機関や職員の違法な行為によって自治体が損害を被ることになった場合,損害を発生させた者に対する損害賠償,不当利得返還を行うことにより,自治体の損害の補填を図る請求です。

=訴えの提起=
住民訴訟は,住民監査請求に対する監査委員の監査結果等が出されてから30日以内に提起する必要があります。具体的には次の通りです。

イ)監査委員の監査の結果又は勧告に不服がある場合(請求却下の場合を含む)
→ 監査の結果又は勧告の内容の通知があった日から30日以内
ロ)勧告を受けた市長などの措置に不服がある場合
→ 措置に係る監査委員の通知があった日から30日以内
ハ)請求をした日から60日を経過しても,監査委員が,監査又は勧告を行わない場合
→ 60日を経過した日から30日以内
ニ)勧告を受けた市長などが措置を講じないことを不服とする場合
→ 勧告に示された期間を経過した日から30日以内

❏ 情報公開請求の活用
住民監査請求をする際は,請求内容を特定し,また,財務会計行為や怠る事実が違法・不当であることの根拠も明らかにしなければなりません。住民監査請求を効果的なものにするには,財務関係の法規に精通している必要があり,また,事前に情報公開請求等を活用して資料を収集するなどの準備が求められます。
近年はオンブズマン活動などの成果もあがっていますが,資料収集などでアドバイスを求めたい場合には,弁護士への相談もお考えください。

2018年1月28日 | カテゴリー : 行政事件 | 投稿者 : 事務局