〔lawyer’ blog〕✍ “Hallelujah”

昨日の日曜日,休日は事務員がいなくて一人なので,ステレオのボリュームをいつもより少しあげて,CDを聴きながら,たまっている仕事に手をつけました。レナード・コーエンの『You Want It Darker』。昨年10月に発表された彼の遺作です。11月,彼が亡くなった直後に買い求めたのですが,当時の私にはこの作品に向かいあうメンタリティーがなくてしばらく遠ざけてしまっていました。レナードの低く,呟くような歌声。深く暗い澱みのなかから,うねるように立ち上がってくるメロディー。予想していたとおり,ずしんと重い作品でした。でも,デビット・ボウイの『Black Star』もそうでしたが,最後の最後まで新しさを感じさせてくれるところは凄い。

レナードを知ったのは,ジェニファー・ウォーンズが彼の作品をカバーした『Famous Blue Raincoat』に入っている“First We Take Manhattan”のミュージック・ビデオを見たのが最初でした。30年以上も前のことになります。映画『愛と青春の旅立ち』の主題歌を歌ったジェニファーの歌がすばらしいだけでなく,スティービー・レイ・ボーンのギター・ワークがとても格好よくて,今でもこのカバーはお気に入りです(レナード,レイ・ボーンも登場するこのMVは,youtube,ニコ動などにアップされています)。ジェニファーの“Manhattan”と出会ったのがきっかけで,レナードの『Recent Songs』,『Various Positions』あたりを聞くようになったのですが,正直なところ,彼自身の歌声は年老いてから(70歳を超えてから)のほうが“艶”“色”が加わって不思議と聴きやすい。これから聴いてみようという方には,2009年の『Live in London』あたりがお勧めかもしれません。

彼の作品で一番知られているのは“Hallelujah”でしょうか。『Various Positions』に収録されているオリジナルももちろん良いのですが,数多くのアーティストにカバーされている曲で,オリジナルよりよく知られているものさえあります。ジョン・ケール,k.dラング,最近だとペンタトニックス。なかでも夭折したジェフ・バックリーが1枚だけ残したアルバム『Grace』に収録されているものが本当に美しい。同期のS弁護士からこのカバー曲の存在を教えられ,以来,こちらも愛聴盤になっています。レナード・コーエンが書く詩はどれもとても難解なのですが,“Hallelujah”の場合も,英語はもちろん,聖書の知識なども持っていないと何を言わんとしているのかなかなか理解できません。そんなとてもやっかいな曲なのですが,なぜか無性に聴きたくなることがある…。ぜひ一度聴いてみてください。

ボリュームをあげて音楽を聴いていると,どうしてもそちらに意識が向かってしまって集中を欠いてしまいます。昨日も予定していた書面書きは終わらずじまい…。たまった仕事を片づけて,大掃除も済ませてから,ゆっくり彼の曲を聴くようにしたいと思います。

♯ 年内のブログ更新はこれで最後にします。どうぞよいお年をお迎えください。