〔lawyer’ blog〕✍ 文旦(ブンタン)

ふるさと納税の返礼品,第2弾。高知県黒潮町から「文旦(ブンタン)」が届きました。知らなかったのですが,グレープフルーツやナツミカン,ハッサクなどは,文旦が自然交雑してできた品種なのだそうです。つまり,文旦はおなじみの柑橘類の祖先のような存在ということ。ナツミカンほど甘さはなく,ハッサクと比べると水分が少なくてパサっとした食感。物足りないと感じる人もいるかもしれませんが,私はこの素朴な味が大好きです。

文旦を食べると思い出すのが,弁護士になって初めて一人で受任した民事事件の依頼者,Wさんのこと。橋梁工事の型枠大工をしていて,1年の大半を山奥の飯場で過ごしているという方でした。病気で亡くなった同僚の手荷物の中に,この人にお金を貸したときのものと思われるメモが残されていて,そのメモを見た遺族から貸金の返還を求められたというちょっと変わった事案でした。亡くなった同僚とはお金を貸し借りする関係があるにはあったが,借りた分はちゃんと返し終えている,あいつは「貸」と「借」の字を間違えて書いていたんだというWさんの言い分を裁判官に理解してもらうため,Wさんと故人との関係から飯場での作業員たちの生活ぶりまで細かく聴き取っていきました。周りに何もない山奥の飯場でも,ちゃんと近くに仮設の(?)スナックができるのよ,姉ちゃんも街から稼ぎにくるのよ,なんていうWさんの話についていくのに当時の私は必死でした。

何とか請求棄却の判決を勝ち取った後,高知県出身のWさんから送られてきたのが文旦の10kg箱。美味しいですねとお礼を言うと,そうでしょ,うまいでしょ,また送るよと言ってくれ,本当にその後何年も続けてこの季節に文旦を送ってくれたのでした。