〔lawyer’ blog〕✍ 誰のための“働き方改革”なのか

GWを終えてから体調を崩してしまいました。夏のような暑さが続いていたと思っていたら,急に季節が一つ前に戻ってコートを羽織らないといけなかったり,体がついていけませんでした。まぁ,GWの前半,出雲,松江,そして倉敷と,短い日程でちょっと欲張りな旅をして,疲れをためたのもいけなかったのですが…。反省。20年振りに訪れた松江の変わりようについてはまた別の機会に書こうと思います。

GWを終えて国会も動き出しました。モリ・カケ問題にももちろん注目ですが,法案の行方が気になるのは「働き方改革一括法案」です。ご存知かと思いますが,この法案には「高度プロフェッショナル制度」という労働基準法の労働時間に関する規定を適用しなくても済むようにしてしまうという驚くべき制度が盛り込まれています。労基法の労働時間に関する規定の適用がない,ということは,例えば,1日の所定労働時間を午前9時から午後10時まで15時間とすることも(所定労働時間ですから残業代は「0」です。),ノルマを達成するまで休まずに働くよう命ずることも(休憩もなし,ということも可能。),すべて“違法”ではなくなってしまう,ということを意味します。おそろしいと思いませんか? “過労死促進法”という批判が起こるのもむべなるかなです。

政府は,この制度の対象となるのは自分で働き方を決めることができる高度な専門職に限られるから問題ないとしていますが,“自分で働き方を決めることができる人”のみが対象となるという保障はこの法案のどこにもありません。また,出勤・退社の時間を自分で決められる,それが働き方の改革につながるというのですが,今でもフレックスタイム制や有休の時間単位取得など色々な仕組みがあるのですから,「高度プロフェッショナル制度」を導入しなければならない理由としては余りにも弱いと言わざるを得ません。この制度の導入を歓迎するのは,労働者ではなく,労働時間の規制なしに労働者を働かせることができる使用者ということになります。現に経団連の榊原会長などは何度もこの制度の創設に強い期待を表明しています。

法案審議の山場は今月末となるようです。日本労働弁護団では,22日(火)午後6時30分から日比谷野音で集会と集会後の国会請願デモを企画しています。ぜひご参加ください。