7 子どもの面会交流

妻と離婚することになりました。離婚自体には納得しているのですが,小学生の子どもと離れて暮らさなければならないことが残念でなりません。離婚してからも子どもとの交流を大切にしていきたいと思っているのですが,妻はあまり子どもに私と会わせたくないようです。妻に子どもとの面会交流を約束させることはできないものでしょうか。

“面会交流”とは?

離婚などで子どもと離れて暮らしている親(監護権を持っていない親)が,子どもと直接会ったり,電話や手紙,メールやプレゼントの受け渡しを通じて子どもと定期的に交流することを「面会交流」といいます。

以前は「面接交渉」という用語が使われていたのですが,裁判所が作成した家事事件の申立書式で面会交流という用語が使われるようになり,また,平成23年に改正され翌平成24年4月から施行された改正民法の条文でも「父又は母と子との面会及びその他の交流」という表現が用いられたため(766条),現在では「面会交流」という用語が定着しています。

面会交流は誰の権利か?

面会交流(権)については,平成23年の改正まで,民法の中にも明確な定めは置かれておらず,判例でその権利性が認められているにすぎませんでした。
改正民法では,夫婦が離婚する際,子の監護をする者,養育費などとともに「父又は母と子の面会及びその他の交流」について協議で定めること,協議が整わないときは家庭裁判所が定めることが規定されました(民法766条1,2項)。

この改正が行われるまでは,面会交流は親の権利なのか,両親から愛情を受けて育てられるという利益を守るための子どもの権利と捉えるべきなのではないか,といった議論がありました。改正法では,面会交流についての協議においては,「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」とされたので(766条1項),主たる権利の主体は子ども,という理解になるものと思われます。もっとも,子どもの権利といってみても,特に幼い子どもの場合は,子ども自身が権利行使をすることは困難ですし,面会交流を妨げるとすれば親権・監護権を有している側の親ということになるので,この権利が問題となる場面においては,監護権をもっていない親が事実上権利を主張するということになります。

面会交流の定め方

(元)夫婦間の話し合いで決めるのが原則ですが,親権について争いがあったケースなどでは,実際にはスムーズに決まらないことも多いかと思います。その場合には,家庭裁判所に面会交流を求める調停,あるいは審判の申立てをすることになります。

調停では,2人の調停委員が間に入り,面会交流の可否,実施する場合の方法,回数,日時・場所などの具体的な内容を調整していくことになります。その際,家庭裁判所の調査官が加わり,調停期日に同席をしたり,期日外に子どもや関係者と面接するなどの調査を行ったり,調査官の立ち合いのもとで子どもと面会を求める親との試行的面接を行ったりすることがあります。

調査官による調査の結果,調査官が立ち会った試行的面接の結果は,調停での調整を行う上での材料となりますし,審判に移行した場合には,裁判官が判断する上でも参考とされることになります。

面会交流の内容

裁判所で決められる面会交流は,面会回数としては月1回程度,面会時間も2~3時間程度というものが多いかと思います。宿泊を伴う面会,旅行を希望する親も多いのですが,子どもを監護している側の親が了承しないと,なかなか実現できないのが実情です。

離婚をした親の間で確執が残るのもやむを得ない場合もありますが,親からの愛情を受けて育つ子どもの権利というこの権利の本来の内容からすると,もう少し豊かな面会交流が行われるようになるべきだろうと個人的には考えています。

面会交流が実現されない場合

裁判所で決めた面会交流が相手方の非協力によって実現できない場合には,まず,婚姻費用のところでも説明した家庭裁判所から履行勧告という仕組みを利用することができます。
勧告にも応じてもらえない場合ですが,子どもを連れてきて面会交流を強制的に実現させるという強制執行はできないのですが,面会を拒むごとに一定額の制裁金を支払わせるという間接強制を求めることはできます。また,取り決めた面会交流を行わないことを債務不履行として損害賠償を求めることも可能です。