2 社会保険・労働保険の不服申立て手続

社会保険(各種年金,健康保険),労働保険(雇用保険,労災保険)といった社会保険制度にもとづく各種給付の支給申請をしたが,不支給となってしまったとか,予想していたよりも低い等級の認定しかされなかったという場合などには,どのような不服申し立てができるでしょうか。
社会保険・労働保険の決定に対する不服申し立てについては,行政不服審査法に基づく一般的な不服申し立てとは少し異なる手続が,国民年金法や厚生年金健康保険法,健康保険法,雇用保険法,労働者災害補償保険法といった法律の中に定められています。

◊ 社会保険の決定に対する不服申し立て
社会保険(年金,健康保険)の決定に対する不服申立ては,社会保険審査官に対して行う「審査請求」が第一段階,社会保険審査会に対して行う「再審査請求」が第二段階というように2段階になっています。どちらかで不服が認められれば,原処分は見直されることになります。
これを図にしてみると,次のとおりです。

【日本年金機構(厚労大臣)の処分に対する不服申し立て】

年金機構の原処分(支給処分・不支給処分・却下処分)

⇓ ※ 処分があったことを知った日の翌日から起算して3ヵ月以内

[審査請求]
社会保険審査官(地方厚生局)に対する審査請求

⇓               ⇓
認容決定          却下・棄却決定
(原処分は見直し)

※決定書の謄本が送付され     ※ 審査請求の決定の送達を受けた日の日 た日の翌日から起算して  翌日から起算して6カ月以内
2ヶ月以内
[再審査請求]
社会保険審査会に対する再審査請求

⇓ ⇓ [取消訴訟]
認容裁決 却下・棄却裁決   地方裁判所に取消訴訟を提起    (原処分は見直し)
※裁決の送達を受けた日
の翌日から起算して6か月以内

平成26年に公正性の向上,使いやすさの向上等の観点から行政不服審査法の改正が行われたことに伴い,年金,健康保険に関する審査請求制度についても改正が行われています。
大きな改正点は2つ。1つは,改正前は,再審査請求を経ないと取消訴訟を提起することはできなかったのですが,改正後(平成28年4月以降の処分)は,審査請求をした後は,再審査請求をするか,裁判所に取消訴訟を提起するかを自由に選択できるようになりました。もう1点は,改正前は,原処分に対して審査請求ができる期間は処分があったことを知った日から60日以内とされていましたが,改正後は,3ヶ月以内と1ヶ月延長されています。

◊ 「労働保険」の不服申し立て
労働保険(雇用保険,労災保険)の決定に対する不服申立ての仕組みについても,行政不服審査法の改正に伴い,同様に見直しが行われ,平成28年4月から新しい仕組みになっています。
基本的には,年金・健康保険の決定に対する不服申し立ての仕組みと共通です。審査請求できる期間が1ヶ月延長された点,審査請求をした後,再審査請求をするか,裁判所に取消訴訟を提起するかを選択できるようになった点なども社会保険の場合と同じです。
ただ,年金・健康保険の場合は,再審査請求をするには審査請求を経る必要があるのに対し,雇用保険・労災保険の場合には,労災保険審査官や雇用保険審査官に対して審査請求を申し立ててから3ヶ月が経過しても決定がない場合には,決定を待たずに労働保険審査会に再審査請求ができるとされているなど,社会保険の場合と一部異なる取扱いもあります。

2018年1月28日 | カテゴリー : 行政事件 | 投稿者 : 事務局