交通事故の被害について弁護士に依頼をしたいと考えているが,弁護士費用を加害者に請求することはできないのでしょうか?
また,「弁護士特約」という言葉を最近よく耳にしますが,どういう仕組みなのでしょうか?
弁護士費用を加害者に請求することの可否
交通事故によって被った損害の賠償を交渉で求めていく場合,任意保険会社が弁護士費用まで含めて支払いに応じてくることはほとんどありません。
損害賠償請求の裁判を起こす場合には,弁護士費用を加えた請求を行うことが可能です。
弁護士との間で結んでいる報酬契約に基づく金額を損害額に加算して請求することになりますが,裁判所は,報酬契約で決められた金額の通りには弁護士費用を損害として認定してくれません。
賠償額にもよりますが,勝訴額の1割程度を認定している裁判例が多いようです。
また,裁判の途中で和解で解決をする場合には,弁護士費用が含まれないこともありますし,含めても判決の場合よりも低い割合になることが多いかと思います。
「弁護士特約」とは?
交通事故の被害に遭った際,加害者との間の交渉がうまく行かず,弁護士に委任をせざるを得なくなったとき,弁護士費用を保険会社が支払うという特約を「弁護士特約」と言います。
任意保険に付帯されている特約(オプション)で,ほとんどの保険会社で商品化されています。
弁護士特約には費用の支払限度額が設定されていますが,300万円までという設定になっている商品が多いようです。
賠償額が数千万円になるようなケースを除けば,十分に弁護士費用をまかなうことができる内容になっています。
また,これは保険会社によって違ってくるのですが,自動車事故による被害以外もカバーするものや(借地借家,離婚,遺産分割といった一般民事・家事事件に関する弁護士費用までカバーする商品も登場しています。),1つの契約で家族の車での事故までカバーするものなどもあります。
弁護士特約付の保険商品の契約件数は,2014 年度には約2200 万件に達しているということですから,皆さんが加入している保険にも,この特約が付保されているかもしれません。
一度,確認してみるとよいでしょう。
この特約を利用すると保険料の等級が引き下げられ,翌年の保険料が高くなってしまうという誤解をしている人も多いようです。
しかし,実際には,特約を利用してもノーカウントとされているため,翌年の保険料が高くなるということはありません。
特約を付けた自動車保険に入っていて交通事故の被害に遭ったという場合には,この特約を積極的に活用すべきでしょう。
事故被害に遭った時に心強い弁護士特約ですが,この特約を利用するには,「保険会社の事前の承認(同意)」が必要とされています。
被害者が依頼をした弁護士と保険会社との間で費用の支払いをめぐるトラブルを防ぐ趣旨で設けられている要件です。
ただ,この要件があることが,弁護士特約を利用しずらくしている面があるとの指摘もあります。
保険会社の対応も変化してきているようなので,ともかくまず連絡を入れてこの特約の利用について相談をしてみてはいかがでしょうか。