【注目判例】 審判で命じられた面会交流が実行されなかった場合,間接強制をすることができるとした事例 ~最高裁第1小法廷:H25.3.28決定~

事案の内容

Y(抗告人・母親)とX(相手方・父親)とは,裁判で離婚をした元夫婦です。平成22年に確定をした離婚訴訟の判決では,長女Aの親権者はYとされました。その後,Xは,Aとの面会交流を求めて家庭裁判所に調停,さらに審判を申し立てます。そして,平成24年5月,札幌家庭裁判所は,Yに対し,概ね以下のような要領(本件要領)でAとの面会交流を許さなければならないと命じる審判を出し,これが確定しました。

① 面会交流の日程・場所
・月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時まで
・Aの福祉を考慮してX自宅以外のXが定めた場所で行う
② 面会交流の方法
・Aの受渡場所はY自宅以外の場所とし,当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは,JR甲駅東口改札付近とする
・Yは,面会交流開始時に,受渡場所においてAをXに引き渡し,Xは,面会交流終了時に,受渡場所においてAをYに引き渡す
・Yは,Aを引き渡す場所のほかは,XとAの面会交流には立ち会わない
③ 代替日の調整
Aの病気などやむを得ない事情により上記①の日程で面会交流を実施できない場合は,XとYは,Aの福祉を考慮して代替日を決める
④ Xの学校行事への参列
Yは,XがAの入学式,卒業式,運動会等の学校行事(父兄参観日を除く。)に参列することを妨げてはならない

Xは,面会交流を命じたこの審判にもとづいて,平成24年6月,Aとの面会交流を行うことをYに求めました。しかし,Yは,AがXとの面会交流はしたくないという態度に終始していて,Aに悪影響を及ぼすとしてこれに応じませんでした。このため,Xは,同年7月,札幌家庭裁判所に対し,面会交流を認めた審判にもとづき,本件要領のとおりXがAと面会交流をすることを許さなければならないと命ずるとともに,Yがその義務を履行しないときは,YがXに対し一定の金員を支払うよう命ずる間接強制決定を求める申し立てをしました。
原審・札幌高裁決定(平成24年10月30日・民集67巻3号880頁)は,本件要領は,面会交流の内容を具体的に特定して定めており,また,Aが面会交流を拒絶する意思を示していることが間接強制をすることになじまない事情となることはないなどとして,Yに対し,本件要領のとおりXがAと面会交流をすることを許さなければならないと命じました。さらに,Yがその義務を履行しないときは,不履行1回につき5万円の割合による金員をXに支払うよう命じ,間接強制を認めました。
この札幌高裁の決定を不服としてYが申し立てた許可抗告に対する判断が,ここで紹介する最高裁決定になります。

最高裁判所の判断

1 監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の 特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができる。
2 監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,次のⅰ),ⅱ)のとおり定められているなど判示の事情の下では,監護親がすべき給付の特定に欠けるところはないといえ,上記審;判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができる。
ⅰ)面会交流の日程等は,月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし,場所は,子の福祉を考慮して非監護親の自宅以外の非監護親が定めた場所とする。
ⅱ)子の受渡場所は,監護親の自宅以外の場所とし,当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは,所定の駅改札口付近とし,監護親は,面会交流開始時に,受渡場所において子を非監護親に引き渡し,子を引き渡す場面のほかは,面会交流に立ち会わず,非監護親は,面会交流終了時に,受渡場所において子を監護親に引き渡す。

解説

◇ 面会交流
離婚などで子どもと離れて暮らしている親(監護権を持っていない親=非監護親)が,子どもと直接会ったり,電話や手紙,メールやプレゼントの受け渡しを通じて子どもと定期的に交流することを「面会交流」といいます。
この非監護親の面会交流(権)については,平成23年の改正まで,民法の中にも明確な定めは置かれておらず,判例でその権利性が認められているにすぎませんでした。改正民法によって,夫婦が離婚する際,子の監護をする者,養育費などとともに「父又は母と子の面会及びその他の交流」について協議で定めること,協議が整わないときは家庭裁判所が定めることが規定されました(民法766条1,2項)。
家庭裁判所に面会交流を求める手続を申し立てるにあたっては,離婚の場合とは異なり,「調停前置」は要求されていません。このため,調停を経ずにいきなり審判の申し立てをするということも法律上は可能です。ただ,現実の運用としては,審判を申し立てても,まずは調停の手続に付されることが多いようです。

◇ 調停・審判における面会交流の取り扱い
最近の家裁の実務では,面会交流を禁止または制限すべき事由がなければ,原則として面会交流を行わせるという方向で調整が行われているのが実情です。
面会交流を禁止または制限すべき事由としては,例えば,ア)面会交流時に子どもが連れ去られるおそれがある場合,イ)非監護親が子どもに虐待をしていた場合,ウ)同居親が非監護親から暴力を振るわれていて,面会交流時に暴力が振るわれるおそれがある場合,エ)子ども自身が面会交流に拒絶的である場合などが挙げられます。
これらの事由の存否については,当事者の主張が大きく対立することも珍しくありません。家庭裁判所の調査官による調査を行うなどして,面会交流を禁止または制限すべき事由があるかどうかを見極めた上で,面会交流の実施することの適否を判断していくことになります。
今回の事案においても,審判手続の中でこうした面会交流を禁止または制限すべき事由の存否が争われたのですが,裁判所は面会交流を許さなければならないと判断しました。

◇ 裁判所による面会交流の実現手段
面会交流を実施する調停条項や審判条項があるにもかかわらず,監護親の非協力によりこれが実現できない場合,面会を求める非監護親としてどのような手段を取ることができるでしょうか。
1)履行勧告
面会交流を求める非監護親が取り得る最も簡便な手段は,『履行勧告』制度の利用です。非監護親からの申し出があると,まず,家裁調査官から,調停条項に定められた面会交流を実施するようにという文書が監護親に送付され,それでも反応がない場合には,電話をかけて履行を促すという仕組みになります。ただ,履行勧告はあくまでも“勧告”にとどまり,履行命令(家事事件手続法290条)のような強制力はありません。
2)損害賠償請求
監護親が面会交流に正当な理由なく応じないことが債務不履行(合意違反),もしくは不法行為となるとして損害賠償を求めるということも考えられ,実際に請求が認められている裁判例もいくつかあります(横浜地方裁判所平成21年7月8日判決・家庭裁判月報63巻3号など)。ただ,裁判の結論が出るまでにはどうしても一定の時間がかかってしまいます。
3)間接強制の申立て
そこで,次に考えられる手段が『間接強制』になります。間接強制とは,民事執行法が定める強制執行手続きの1つで,債務者に対して,一定の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金の支払いを課すというものです。面会交流について間接強制を活用するということは,例えば,監護親に対して,「非監護親と子とを面会させよ。面会させない場合には,不履行1回につき金5万円を支払え」などという命令を裁判所に出してもらうということになります。

◇ 最高裁決定の意義
1)面会交流についても間接強制が許される
面会交流について間接強制手続を使うことができるかについては,これを肯定する見解が多数でしたが,否定説も有力に主張されていました。監護親の協力が得られないまま面会を強行することは,一般的に子の利益を害することになるとか,面会交流については監護親,非監護親との間に最小限の信頼関係があることが不可欠で,面会交流を強行することはこれを破壊することになるといった見解です。
今回の最高裁決定は,まず,こうした見解をしりぞけ,面会交流についても間接強制が許される場合があることを明らかにしました。
2)給付内容の特定について
間接強制を含む強制執行を裁判所が命ずるには,債務者が履行しなければならない債務の内容が特定していなければなりません。したがって,調停や審判で面会交流を行うことが認められていても,当事者間での協議や事前の調整が必要となるような定め方になっていると,裁判所に間接強制を命じてもらうことは難しくなります。
面会交流の場合,給付内容がどの程度まで特定していれば間接強制を命じることができるかについて,今回の最高裁決定は,「面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当」と判断しました。
実は,最高裁は,同じ日に本件を含む3つの事案について面会交流に関する間接強制の許否の判断を示していて,他の2つの事案については間接強制を否定しています。審判に子の引き渡しに関する規定がないこと,面会時間についての調停条項の定め方が延長の余地があるものとされていることがそれぞれ理由とされています。間接強制が必要となることが予想されるようなケースにおいては,「面会交流の日時,頻度」「面会実施時間の長さ」「子の引き渡し方法」については具体的に決めておく必要がある,ということになります。
3)調停,審判の後に生じた事情の取り扱いについて
本件事案でYは,審判後,Aが面会交流を拒絶する態度に終始していることを面会交流を拒絶する正当事由として主張していました。審判(調停)の時とは異なる状況が生じたといえる場合であっても間接強制を命じることができるのでしょうか。
この点について最高裁は,「審判時とは異なる状況が生じたといえるときは上記審判に係る面会交流を禁止し,又は面会交流についての新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得ることなどは格別,上記審判に基づく間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない」と判断しました。つまり,面会交流を定める審判や調停の後に状況が変わった場合には,改めて調停や審判を申し立てるなどして面会交流に関するルールの変更を求めればよく,非監護親が申し立てた間接強制を却下するということにはならないとしたのです。

コメント

本件を含む3件についての最高裁決定によって,面会交流が拒まれている事案について間接強制を命じることができる場合があることが明らかになり,しかも,間接強制を求める場合,審判・調停においてどの程度まで給付内容を特定しておく必要があるのかの判断の基準も示されました。もう5年前の決定になりますが,その後,この最高裁決定は,面会交流に関する家裁の実務に非常に大きな影響を与えています。非監護親の側からは,この最高裁決定を意識して,面会交流の具体的な内容を調停条項の中に取り込んで欲しいという要望が出されることが多くなり,その結果,調整が難航するというケースも増えてきました。ただ,当事者間に最低限の信頼関係がないと面会交流を円滑に実施することは難しいため,少なくともスタート時には協議・調整が必要となってくる事案も少なくありません。間接強制の発令以前にどのように面会交流の履行を促進・確保していくかは,依然として大きな課題です。