〔lawyer’ blog〕✍ 世界フィギュア

年度末の3月はタダでさえ慌ただしいのに,個人事業主にとっては確定申告という別の“苦行”が待っています。普段から資料整理を心掛けておけば何てことはないはずなのですが,どうせお金を納めるだけなんだからと考えてしまうと手が止まってしまいがち。届いていたはずの生命保険料の控除証明書が見あたらない,クレジットカードの利用明細をネットで取ろうとしたら1年前までしか取ることができないなど,今年もドタバタしてしまいましたが,何とか期限内に申告を終えることができました。

ほっとしたところで,連休の合間,さいたまスーパーアリーナで行われた“世界フィギュアスケート選手権”を見に行ってきました。海外歌劇団のオペラ公演並みのチケット料金に驚きましたが,世界フィギュアの日本開催は5年振り,次のチャンスがいつになるかわかりません。ブレイク中の紀平梨花さんの演技も見ておきたかったので,思い切って購入しました。フィギュアスケートの生観戦は初めて。リンクサイドからちょっと離れた席で,選手の表情はオペラグラスを使わないとわかりませんでしたが,スケートのエッジが氷を削る音が時折聞こえてきたりして臨場感は十分でした。

びっくりしたのは女性の観客の多さ。8割近くが女性で,年代も10代から60~70代まで様々。“お一人様観戦”らしき人もたくさんお見受けしました。さらに,彼女たちの“フィギュア愛”の深さには驚かされました。どの国の選手でも良い演技をすればスタンディング・オベーション,惜しみない拍手を送り,ミスをしてしまった時には一緒になってがっかりする。わずか数分の演技にすべてを賭ける選手たちの想いをしっかり受け止め,これに声援で応える彼女たちの姿は,日本選手の活躍だけを殊更に取り上げるメディアの姿勢とは全く違っていました。また,機会があったらフィギュア観戦,してみたいと思います。

 

 

 

 

〔lawyer’ blog〕✍ 何という試合! 

気がついたら1月も残すところ1週間。新年になってからブログを更新しないまま3週間も過ぎてしまいました。といってもボーっとしていたわけではありません。2日の夜から3日にかけて「当番弁護士」の待機日。いつ出動の要請があるかわからないため,遠出をすることはできませんし,かといってお酒を飲みながら箱根駅伝をテレビ観戦するというわけにもいきません。4日に勾留満期を迎える被疑者国選弁護の事件も抱えていたため,正月気分を味わうことなく,なし崩し的に新年の仕事をスタートさせたのでした。

猪年なのでこのまま突っ走ろうかと思っていたところ,先週末に風邪をひいてしまってあえなくダウン。鼻水をすすりながら見たのが全豪オープンテニスです。グランドスラムの5セットマッチ,3時間を超えることも珍しくない男子の試合となると,試合開始からゲームセットまで通しで見ることなど滅多にありません。でも,風邪で思考力が著しく低下してしまってはほかにすることもなく,ソファーに横になりながら,WOWWOWで何試合か見てしまいました。フェデラーとツチパスの新旧対決は見応えがありました。10数本あったブレークポイントを凌ぎ切り,サービスゲームをすべてキープしてフェデラーを倒したツチパスのプレーの質には正直驚きました。ズベレフ,ティエム,ティアフォーなどの次世代エース候補の中から頭一つ抜け出したように思います。ネットプレーがもう少しうまくなれば,近い将来,間違いなく4大タイトルを手にすると予想します。甘いマスクで人気も出そう。

しかし,何より興奮したのは錦織圭とブスタの試合でした。2セットダウン,第3セットもタイブレークまで追い詰められましたが,そこを何とか切り抜け,2セットを挽回。ファイナルセットでは,ここを取れば勝利という第10ゲームのサービスゲームをブレークされる嫌な展開になり,10ポイント先取のタイブレークに入ってからもミニブレイクを先行され,5-8と3ポイント離された時はここまでかと思いました。そこから粘って5ポイントを連取するとは! 一昨年,右手首の腱を部分断裂するという大けがを負った時には,もう彼にはグランドスラムのタイトルを取るチャンスは巡ってこないのではないかと思っていたのですが,けがからは完全に復調し,体もひと回り大きくなったような気がします。弱点だったサーブもずいぶんと強化され,サービスゲームを安定してキープできるようになったのは大きい。今年は,もしかすると,もしかするかもしれません。錦織くんのプレーに熱中するうち,風邪はすっかりよくなったようです。

【注目判例】 審判で命じられた面会交流が実行されなかった場合,間接強制をすることができるとした事例 ~最高裁第1小法廷:H25.3.28決定~

事案の内容

Y(抗告人・母親)とX(相手方・父親)とは,裁判で離婚をした元夫婦です。平成22年に確定をした離婚訴訟の判決では,長女Aの親権者はYとされました。その後,Xは,Aとの面会交流を求めて家庭裁判所に調停,さらに審判を申し立てます。そして,平成24年5月,札幌家庭裁判所は,Yに対し,概ね以下のような要領(本件要領)でAとの面会交流を許さなければならないと命じる審判を出し,これが確定しました。

① 面会交流の日程・場所
・月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時まで
・Aの福祉を考慮してX自宅以外のXが定めた場所で行う
② 面会交流の方法
・Aの受渡場所はY自宅以外の場所とし,当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは,JR甲駅東口改札付近とする
・Yは,面会交流開始時に,受渡場所においてAをXに引き渡し,Xは,面会交流終了時に,受渡場所においてAをYに引き渡す
・Yは,Aを引き渡す場所のほかは,XとAの面会交流には立ち会わない
③ 代替日の調整
Aの病気などやむを得ない事情により上記①の日程で面会交流を実施できない場合は,XとYは,Aの福祉を考慮して代替日を決める
④ Xの学校行事への参列
Yは,XがAの入学式,卒業式,運動会等の学校行事(父兄参観日を除く。)に参列することを妨げてはならない

Xは,面会交流を命じたこの審判にもとづいて,平成24年6月,Aとの面会交流を行うことをYに求めました。しかし,Yは,AがXとの面会交流はしたくないという態度に終始していて,Aに悪影響を及ぼすとしてこれに応じませんでした。このため,Xは,同年7月,札幌家庭裁判所に対し,面会交流を認めた審判にもとづき,本件要領のとおりXがAと面会交流をすることを許さなければならないと命ずるとともに,Yがその義務を履行しないときは,YがXに対し一定の金員を支払うよう命ずる間接強制決定を求める申し立てをしました。
原審・札幌高裁決定(平成24年10月30日・民集67巻3号880頁)は,本件要領は,面会交流の内容を具体的に特定して定めており,また,Aが面会交流を拒絶する意思を示していることが間接強制をすることになじまない事情となることはないなどとして,Yに対し,本件要領のとおりXがAと面会交流をすることを許さなければならないと命じました。さらに,Yがその義務を履行しないときは,不履行1回につき5万円の割合による金員をXに支払うよう命じ,間接強制を認めました。
この札幌高裁の決定を不服としてYが申し立てた許可抗告に対する判断が,ここで紹介する最高裁決定になります。

最高裁判所の判断

1 監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の 特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができる。
2 監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,次のⅰ),ⅱ)のとおり定められているなど判示の事情の下では,監護親がすべき給付の特定に欠けるところはないといえ,上記審;判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができる。
ⅰ)面会交流の日程等は,月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし,場所は,子の福祉を考慮して非監護親の自宅以外の非監護親が定めた場所とする。
ⅱ)子の受渡場所は,監護親の自宅以外の場所とし,当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは,所定の駅改札口付近とし,監護親は,面会交流開始時に,受渡場所において子を非監護親に引き渡し,子を引き渡す場面のほかは,面会交流に立ち会わず,非監護親は,面会交流終了時に,受渡場所において子を監護親に引き渡す。

解説

◇ 面会交流
離婚などで子どもと離れて暮らしている親(監護権を持っていない親=非監護親)が,子どもと直接会ったり,電話や手紙,メールやプレゼントの受け渡しを通じて子どもと定期的に交流することを「面会交流」といいます。
この非監護親の面会交流(権)については,平成23年の改正まで,民法の中にも明確な定めは置かれておらず,判例でその権利性が認められているにすぎませんでした。改正民法によって,夫婦が離婚する際,子の監護をする者,養育費などとともに「父又は母と子の面会及びその他の交流」について協議で定めること,協議が整わないときは家庭裁判所が定めることが規定されました(民法766条1,2項)。
家庭裁判所に面会交流を求める手続を申し立てるにあたっては,離婚の場合とは異なり,「調停前置」は要求されていません。このため,調停を経ずにいきなり審判の申し立てをするということも法律上は可能です。ただ,現実の運用としては,審判を申し立てても,まずは調停の手続に付されることが多いようです。

◇ 調停・審判における面会交流の取り扱い
最近の家裁の実務では,面会交流を禁止または制限すべき事由がなければ,原則として面会交流を行わせるという方向で調整が行われているのが実情です。
面会交流を禁止または制限すべき事由としては,例えば,ア)面会交流時に子どもが連れ去られるおそれがある場合,イ)非監護親が子どもに虐待をしていた場合,ウ)同居親が非監護親から暴力を振るわれていて,面会交流時に暴力が振るわれるおそれがある場合,エ)子ども自身が面会交流に拒絶的である場合などが挙げられます。
これらの事由の存否については,当事者の主張が大きく対立することも珍しくありません。家庭裁判所の調査官による調査を行うなどして,面会交流を禁止または制限すべき事由があるかどうかを見極めた上で,面会交流の実施することの適否を判断していくことになります。
今回の事案においても,審判手続の中でこうした面会交流を禁止または制限すべき事由の存否が争われたのですが,裁判所は面会交流を許さなければならないと判断しました。

◇ 裁判所による面会交流の実現手段
面会交流を実施する調停条項や審判条項があるにもかかわらず,監護親の非協力によりこれが実現できない場合,面会を求める非監護親としてどのような手段を取ることができるでしょうか。
1)履行勧告
面会交流を求める非監護親が取り得る最も簡便な手段は,『履行勧告』制度の利用です。非監護親からの申し出があると,まず,家裁調査官から,調停条項に定められた面会交流を実施するようにという文書が監護親に送付され,それでも反応がない場合には,電話をかけて履行を促すという仕組みになります。ただ,履行勧告はあくまでも“勧告”にとどまり,履行命令(家事事件手続法290条)のような強制力はありません。
2)損害賠償請求
監護親が面会交流に正当な理由なく応じないことが債務不履行(合意違反),もしくは不法行為となるとして損害賠償を求めるということも考えられ,実際に請求が認められている裁判例もいくつかあります(横浜地方裁判所平成21年7月8日判決・家庭裁判月報63巻3号など)。ただ,裁判の結論が出るまでにはどうしても一定の時間がかかってしまいます。
3)間接強制の申立て
そこで,次に考えられる手段が『間接強制』になります。間接強制とは,民事執行法が定める強制執行手続きの1つで,債務者に対して,一定の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金の支払いを課すというものです。面会交流について間接強制を活用するということは,例えば,監護親に対して,「非監護親と子とを面会させよ。面会させない場合には,不履行1回につき金5万円を支払え」などという命令を裁判所に出してもらうということになります。

◇ 最高裁決定の意義
1)面会交流についても間接強制が許される
面会交流について間接強制手続を使うことができるかについては,これを肯定する見解が多数でしたが,否定説も有力に主張されていました。監護親の協力が得られないまま面会を強行することは,一般的に子の利益を害することになるとか,面会交流については監護親,非監護親との間に最小限の信頼関係があることが不可欠で,面会交流を強行することはこれを破壊することになるといった見解です。
今回の最高裁決定は,まず,こうした見解をしりぞけ,面会交流についても間接強制が許される場合があることを明らかにしました。
2)給付内容の特定について
間接強制を含む強制執行を裁判所が命ずるには,債務者が履行しなければならない債務の内容が特定していなければなりません。したがって,調停や審判で面会交流を行うことが認められていても,当事者間での協議や事前の調整が必要となるような定め方になっていると,裁判所に間接強制を命じてもらうことは難しくなります。
面会交流の場合,給付内容がどの程度まで特定していれば間接強制を命じることができるかについて,今回の最高裁決定は,「面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当」と判断しました。
実は,最高裁は,同じ日に本件を含む3つの事案について面会交流に関する間接強制の許否の判断を示していて,他の2つの事案については間接強制を否定しています。審判に子の引き渡しに関する規定がないこと,面会時間についての調停条項の定め方が延長の余地があるものとされていることがそれぞれ理由とされています。間接強制が必要となることが予想されるようなケースにおいては,「面会交流の日時,頻度」「面会実施時間の長さ」「子の引き渡し方法」については具体的に決めておく必要がある,ということになります。
3)調停,審判の後に生じた事情の取り扱いについて
本件事案でYは,審判後,Aが面会交流を拒絶する態度に終始していることを面会交流を拒絶する正当事由として主張していました。審判(調停)の時とは異なる状況が生じたといえる場合であっても間接強制を命じることができるのでしょうか。
この点について最高裁は,「審判時とは異なる状況が生じたといえるときは上記審判に係る面会交流を禁止し,又は面会交流についての新たな条項を定めるための調停や審判を申し立てる理由となり得ることなどは格別,上記審判に基づく間接強制決定をすることを妨げる理由となるものではない」と判断しました。つまり,面会交流を定める審判や調停の後に状況が変わった場合には,改めて調停や審判を申し立てるなどして面会交流に関するルールの変更を求めればよく,非監護親が申し立てた間接強制を却下するということにはならないとしたのです。

コメント

本件を含む3件についての最高裁決定によって,面会交流が拒まれている事案について間接強制を命じることができる場合があることが明らかになり,しかも,間接強制を求める場合,審判・調停においてどの程度まで給付内容を特定しておく必要があるのかの判断の基準も示されました。もう5年前の決定になりますが,その後,この最高裁決定は,面会交流に関する家裁の実務に非常に大きな影響を与えています。非監護親の側からは,この最高裁決定を意識して,面会交流の具体的な内容を調停条項の中に取り込んで欲しいという要望が出されることが多くなり,その結果,調整が難航するというケースも増えてきました。ただ,当事者間に最低限の信頼関係がないと面会交流を円滑に実施することは難しいため,少なくともスタート時には協議・調整が必要となってくる事案も少なくありません。間接強制の発令以前にどのように面会交流の履行を促進・確保していくかは,依然として大きな課題です。

3/21(水・祝)「すべてのくらしは憲法25条から 第2回埼玉集会」のご案内

25条埼玉集会実行委員会の主催,埼玉弁護士会,埼玉司法書士会の後援で,「すべてのくらしは憲法25条から 第2回埼玉集会」が3月21日(水),埼玉会館小ホールで行われます。

自助と自己責任を強調した社会保障制度改革推進法が2012年に成立してから,医療,介護,年金,生活保護などあらゆる社会保障分野で給付の削減が推し進められ,憲法25条が定める生存権の保障がおびやかされています。
今回の集会では,結核の療養患者であった故朝日茂さんが,長年音信不通であった兄から仕送りを受けることになった際に行われた生活保護変更処分の違憲性を訴えて最高裁までたたかった「朝日訴訟」の記録映画『人間裁判』が上映されます。また,基調講演は,TV番組のコメンテーターとしてもお馴染みの木村草太首都大学東京大学院教授が行います。

誰もが健康で文化的な生活を送る権利を保障した憲法25条の意義について改めて考えてみる良い機会になるかと思います。ぜひ,お出かけください。

3/21(水・祝)埼玉会館小ホール

12:30開場,12:45~記録映画「人間裁判」上映,13:30~16:30 基調講演,リレートーク

3/30(金)~4/5(木) “田中正造VS小口一郎版画展”のご案内

田中正造と足尾鉱毒事件を題材とした版画をライフワークとした版画家小口(こぐち)一郎の版画展が行われます。鉱毒で汚染された田畑を取り上げられ,北海道佐呂間町に入植した旧谷中村の村民たちの苦難を描いた版画集「鉱毒に追われて」は2013年に映画化されて話題になりました。今年は明治150年を迎えますが,明治期には富国強兵,殖産興業の陰で,多くの平民が苦役を強いられ,自然も破壊されました。日本の公害の原点とも言える足尾鉱毒事件の一部始終を版木に刻み遺した小口一郎の作品を通して近代史の光と影を考える機会にという企画です。八ッ場ダム住民訴訟を支えていただいた茨城の実行委員の方からご案内いただき,私も賛同人になっています。

埼玉からですと少々離れた場所でのイベントですが,この頃には暖かくなり,桜の季節になると思います。どうぞお出かけください。

■田中正造VS小口一郎版画展

日時:3月30日(金)~4月5日(木) 10時~18時 入場無料

会場:とりでアートギャラリーきらり

主催:取手小口一郎版画展実行委員会 資料提供:小口一郎研究会 後援:取手市・取手市教育委員会

埼玉弁護士会主催:憲法と人権を考える市民のつどい 3/9(金) 映画「第九条」上映会,青井美帆さん講演会・「最近の憲法9条改正論」について 

3月9日金曜日に埼玉弁護士会主催の“憲法と人権を考える市民のつどい”が埼玉会館大ホールで行われます。今回取り上げるのは憲法改正問題,特に憲法9条をめぐる最近の議論状況について考えてみようという企画です。

2016年に公開された映画「第九条」(脚本・監督 宮本正樹)の上映が行われます。近未来を舞台にして,憲法改正の検討に入った時の政権が,国際ボランティアNPOの職員,防衛大学生,弁護士,ニートなど様々な職種の12名の若者からなる諮問委員会に憲法第9条の改正についての賛否を議論させるという密室劇です。彼らは沖縄の米軍基地問題,核,拉致問題など様々な角度からの激しい議論を通じて9条の意義を考えていくことになります。果たして,その結論は…。また,当日は,新進気鋭の憲法学者,青井未帆学習院大学法務研究科教授による講演“「最近の憲法9条改正論」について”も行われます。

今年に入ってにわかに注目を集めている憲法改正問題ですが,今,憲法改正についてどのような議論がなされているのか,何が問われようとしているのかを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。ご関心ある方はぜひご参加ください。

憲法と人権を考える市民のつどい 主催:埼玉弁護士会 共催:日本弁護士連合会,関東弁護士会連合会

3月9日(金) 埼玉会館大ホール 午後6時開場 午後6時30分開会

※ 入場は無料です(事前予約不要)。

 

〔lawyer’ blog〕✍ Peace Love and Understanding

正月はテレビばかり見ていたのですが,3日,箱根駅伝の復路を見終えた後,さすがにこのままどこにも出かけずに休みを終えるというのもと思い,妻と連れ立って初詣に出かけました。最初に向かったのは東京大神宮。ここは伊勢神宮とつながりがあるようで,“東京のお伊勢さま“と呼ばれ,正月には参拝者に甘酒や「赤福」が振る舞われます。ちょっと楽しみにしていたのですが着いてみてびっくり。参拝を待つ人の行列が早稲田通りまで続いていました。冷たい風が吹きすさぶ中,1時間近くも並んでいるのはとても耐えられません。かといって,わざわざ着替えて外に出たので,どこかで初詣だけはしていこうということになり,まず浮かんだのは湯島天神。でも,よく考えたら,今さら学問の神様を拝んでも仕方ありません(?)。怖いものみたさで“富岡八幡宮”というのもよぎりましたが,ここは商売の神様にあやかろうということになり,近くの神田明神に向かいました。清水坂下から宮本公園を抜けて裏口から境内に入り,参拝客の列に切れ目ができたところに首尾よく並ぶことができました。門の外がどうなっていたのか様子はみていないのでわかりませんが,もしかすると,東京大神宮と同様,大行列ができていたのかもしれません。裏口から入り込んで並んでしまってゴメンなさい。

まだ数字は発表されていませんが,今年の初詣,ニュースを見ている限りではそこそこの人出だったのではないでしょうか。デパートの初売りも好調だったようですから,2018年の暮らしの見通しは,もしかすると少しは明るいのかもしれません。でも,賽銭箱をのぞいてもお札はちらほら,熊手も売れているのは小さなサイズのものばかり。北朝鮮の金正恩はミサイルを何発も発射し,こちらも何をするかわからないトランプとチキンレースを続けている,日本だってよく考えてみれば865兆円もの借金(国債)を抱えて,それを解消できるあてもない…。「将来の夢がある」と答えることができた新成人が54%しかいないというアンケート結果に象徴されるように,みんなが元気が出る状況にはほど遠いのが現実なのだと思います。

とてもまともとは思えない指導者の手に核のボタンが握られていることを想像してしまうと,平和について考えることにどれだけの意味があるのかと捨て鉢な気持ちにもなってしまいそうですが,それを何とかおさえて,今年も平和のうちに過ごせますようにと手を合わせてきました。

As I walk through
This wicked world
Searchin’ for light in the darkness of insanity
I ask myself
Is all hope gone?
Is there only pain and hatred, and misery?
And each time I feel like this inside
There’s one thing I wanna know:
What’s so funny ‘bout peace love and understanding? 

 

デイブ・エドモンズらと組んだロックパイルで有名なニック・ロウが,その前,Brinsley Schwarzというバンドを組んでいた時に作った“(What’s so funny)Peace Love and Understanding”(エルビス・コステロのヴァージョンが有名で,コステロの曲と思っている人が多いかもしれません)。ベトナム反戦運動やフランスの5月革命などから若者たちが離れていった後の1974年の作品です。そうした時代背景もあってか,ちょっとシニカルなところも感じる曲なのですが,もうすぐ70歳になる彼がアコースティクギター1本でこの曲を歌っている動画を見ていると,ストレートなメッセージソングに聴こえてくるのが不思議です。

“平和”,“愛”,“理解すること”を語るにも,意外とこの力の抜き加減が大切なのかもしれません。今年1年,肩肘張らずに,それでも頑張っていこうと思います。よろしくお願いいたします。

 

 

〔lawyer’ blog〕✍ “Hallelujah”

昨日の日曜日,休日は事務員がいなくて一人なので,ステレオのボリュームをいつもより少しあげて,CDを聴きながら,たまっている仕事に手をつけました。レナード・コーエンの『You Want It Darker』。昨年10月に発表された彼の遺作です。11月,彼が亡くなった直後に買い求めたのですが,当時の私にはこの作品に向かいあうメンタリティーがなくてしばらく遠ざけてしまっていました。レナードの低く,呟くような歌声。深く暗い澱みのなかから,うねるように立ち上がってくるメロディー。予想していたとおり,ずしんと重い作品でした。でも,デビット・ボウイの『Black Star』もそうでしたが,最後の最後まで新しさを感じさせてくれるところは凄い。

レナードを知ったのは,ジェニファー・ウォーンズが彼の作品をカバーした『Famous Blue Raincoat』に入っている“First We Take Manhattan”のミュージック・ビデオを見たのが最初でした。30年以上も前のことになります。映画『愛と青春の旅立ち』の主題歌を歌ったジェニファーの歌がすばらしいだけでなく,スティービー・レイ・ボーンのギター・ワークがとても格好よくて,今でもこのカバーはお気に入りです(レナード,レイ・ボーンも登場するこのMVは,youtube,ニコ動などにアップされています)。ジェニファーの“Manhattan”と出会ったのがきっかけで,レナードの『Recent Songs』,『Various Positions』あたりを聞くようになったのですが,正直なところ,彼自身の歌声は年老いてから(70歳を超えてから)のほうが“艶”“色”が加わって不思議と聴きやすい。これから聴いてみようという方には,2009年の『Live in London』あたりがお勧めかもしれません。

彼の作品で一番知られているのは“Hallelujah”でしょうか。『Various Positions』に収録されているオリジナルももちろん良いのですが,数多くのアーティストにカバーされている曲で,オリジナルよりよく知られているものさえあります。ジョン・ケール,k.dラング,最近だとペンタトニックス。なかでも夭折したジェフ・バックリーが1枚だけ残したアルバム『Grace』に収録されているものが本当に美しい。同期のS弁護士からこのカバー曲の存在を教えられ,以来,こちらも愛聴盤になっています。レナード・コーエンが書く詩はどれもとても難解なのですが,“Hallelujah”の場合も,英語はもちろん,聖書の知識なども持っていないと何を言わんとしているのかなかなか理解できません。そんなとてもやっかいな曲なのですが,なぜか無性に聴きたくなることがある…。ぜひ一度聴いてみてください。

ボリュームをあげて音楽を聴いていると,どうしてもそちらに意識が向かってしまって集中を欠いてしまいます。昨日も予定していた書面書きは終わらずじまい…。たまった仕事を片づけて,大掃除も済ませてから,ゆっくり彼の曲を聴くようにしたいと思います。

♯ 年内のブログ更新はこれで最後にします。どうぞよいお年をお迎えください。

〔lawyer’ blog〕✍ 久しぶりの青空…でしたが

ここ2週間,本当によく雨が降りました。そこに,日曜夜から昨日の朝にかけての台風の来襲。通勤で新荒川大橋を通るのですが,河岸の野球場,ゴルフ場が水没してしまっていて,荒川の川幅がいつもの数倍に拡がっていました。埼玉ではふじみ野などで床上浸水の被害があったようですし,多摩川でも川の増水で中州に取り残されてしまった人がいて,ヘリコプターで救出される映像がテレビで繰り返し流れていましたね。台風のスピードがもっと遅かったら,大きな水害が起きていたかもしれません。

台風が去って本当に久しぶりに青空を見ましたが,この青空を見ながら一番よい気分になっていたのは安倍首相かもしれません。定数を10名減らした総選挙で,解散前の議席数を維持したのですから完勝でしょう。3年後の東京オリンピックの開会式に再びマリオの姿になって登場する,そんなシナリオもみえてきました。

もう1つ現実味を帯びてきたのが「憲法改正」です。自公の政権与党が獲得した議席は313。衆議院の新しい定数は465ですから,憲法改正の発議に必要な3分の2,310議席を超える議席を確保したことになります。野党といっても,希望の党,維新の会は憲法改正には前向きですから,実に衆議院の議席の8割を改憲勢力が占めたことになります。都議選の惨敗で一時はスケジュールの見直しもささやかれていましたが,どうやら年明けに行われる通常国会に改憲案が提出される可能性が再び高まってきました。

安倍首相の思惑どおりに事が運び,通常国会に改憲案が提出されたとしても,その後の国会審議,衆参両議院での発議,そして国民投票までとなると1年近い時間が必要となります。つまり,来年,2018年は,1年を通して憲法改正が議論される年となるかもしれません。憲法といっても“不磨の大典”ではないので,憲法改正を議論すること自体をタブーにしてはいけないと思います。ただ,国の根幹を決める最も大切な法なのですから,国民の中で憲法改正の機運が高まらないうちに,政治家だけの都合で一気に変えられるということは絶対にあってはいけません。憲法についてじっくり考える機会を増やすことに,私も微力を尽くしていくつもりです。

 

 

〔lawyer’ blog〕✍ すみだ北斎美術館

富嶽三十六景 神奈川沖浪裏

先週の土曜日,両国にある「すみだ北斎美術館」に行ってきました。昨年11月にオープンしたばかりの新しい美術館ですが,来館者数はすでに30万人を突破しているのだとか。北斎ブーム,恐るべし!ですね。ただ,私が訪ねた日は,台風の影響でどんよりとした空模様,それに閉館の1時間前だったということもあって,並ばずにすんなり中に入ることができました。「パフォーマー☆北斎 ~江戸と名古屋を駆ける~」という企画展も行われていたのですが,今回は,入館料を節約して,常設展だけ見てきました。常設展は,北斎の画業を彼が使っていた主な画号によって6つの時期に区切り,それぞれの時期の代表作をエピソードを交えて紹介し,生涯を辿っていくという見せ方になっています。展示されている絵は実物大の高細密レプリカです。北斎の絵はサイズが小さなものが多いので,絵の前に人だかりができてしまうと細かなところまで見ることができないのですが,ここの良いところは,タッチパネルのモニターが別に置かれていて,モニターでも絵を見ることができること。画面をピンチして絵を拡大・縮小したり,解説を読むこともできます(英語,中国語,ハングルにも対応)。また,『北斎漫画』などの絵手本をタッチパネルを使ってゲーム感覚で楽しめるモニターもフロアー中央に何台か置かれていて,西洋人の男の子がこれに夢中になっていました。先端の技術を使って美術館も変わってきていますね。

すみだ北斎美術館

北斎の絵もよかったのですが,実は,もう一つ楽しみにしていたのは美術館の「建物」。設計を担当したのは妹島和世(せじまかずよ)さん。今年5月,金沢に旅行に行った時,彼女と西島立衛のユニットSANAAが設計した「金沢21世紀美術館」を訪ねたのですが,ガラスを多用したとても明るく開放的な作りになっていて,この人が設計したほかの建築物も気になっていたのです。お城の前の広大な敷地に建てられた「21世紀美術館」とは違い,狭い敷地,しかもまわりにはマンションや住宅もたくさんあるという立地にどのような美術館を建てたのか興味津々だったのですが,期待にたがわず面白かったです。北側にある公園から見ると,Nipponの「N」の形になっています。壁面には鏡面仕上げが施されたアルミパネルが貼られているのですが,このアルミの鏡面,ステンレスの鏡面とは違って周りの風景の映り込みを淡く柔らかくするのだとか。周囲への心づかいでしょうか。こうした近未来的な構造物の中に北斎の絵が収められていると思うと何とも不思議な感じがします。

今回は小雨が降りだしたこともあって建物の周囲をゆっくり見ることはしなかったのですが,隣の錦糸町に東京簡易裁判所があるので,そちらに行く事件を担当することになったら,また立ち寄ってみようと思っています。(の)