〔lawyer’ blog〕✍ ミシェル・コルボ

同年代と思われる人が書いたブログのネタで目立つのが,“〇〇さんが亡くなった”という話題。10代後半から学生時代,そして20代と人生の中で最も感性が尖がっていた時期に影響を受けた人たちが80代とかそれ以上になっているのですから,毎日のように物故者の記事を目にしてため息をつくのも当たり前なのかもしれません。このひと月余りの間でも,歴史家の色川大吉さん,ローリングストーンズのドラマーのチャーリ-・ワッツ,俳優のジャン=ポール・ベルモンドらが亡くなりました。学生の時,今は再開発で無くなってしまった六本木のシネ・ヴィヴァンでジャン・リュック・ゴダールの「パッション」を観たのがきっかけで,彼の出世作「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」を上映しているミニシアターを探して続けて観て,ベルモンドに(そして,ジーン・セバーグ,アンナ・カリーナに)ハマりました。あれから40年が経とうとしているのか…

でも,一番感傷的になったのは,指揮者のミシェル・コルボが亡くなったという記事でした。ベルモンドやチャーリー・ワッツと比べると,“誰,それ?”という人も多いかと思いますが,クラッシック音楽好き,特にフォーレ好きの人には,“あぁ,そうだね。”と言ってもらえると思います。ローザンヌ声楽アンサンブル,ローザンヌ器楽アンサンブルを率いて,ルネサンス期からバロック期の宗教音楽(声楽曲)の録音を数多く残した名指揮者です。私は,宗教音楽はそれほど聴かないのですが,ガブリエル・フォーレの「レクイエム」だけは別で,中でもコルボがベルン交響楽団を指揮した1972年の録音は高校生の時からお気に入りでした。ピエ・イエズのボーイ・ソプラノの独唱の何とも言えない透明感! 自分の葬式でこのレコードをかけて欲しいという人が多いのも納得です。

大病を克服し,2014年5月,手兵のローザンヌ声楽・器楽アンサンブルを率いて来日し,「ラ・フォル・ジュルネ」音楽祭でフォーレのレクイエムを振った時は,私も東京国際フォーラムの会場で生で演奏を聴きました。正直,1972年盤を聴いた時ほどの鮮烈さは感じなかったのですが,この時の演奏はライブ盤になっていて,こちらもCD棚に並んでいます。これからも,彼のフォーレを聴きたくなることが,きっとまだまだあると思います。合掌。