〔lawyer’ blog〕✍ 大義なき解散,それなのに…

臨時国会冒頭の解散,驚きました。「モリ・カケ隠し」の内閣改造が茶番であることは初めからわかっていましたが,それでも野田聖子,河野太郎といった首相の“お友達”ではない人材を閣内に取り込み,“仕事人内閣”などというネーミングまでつけたのですから,この内閣で一応の“仕事”はするつもりなのだろうと思っていました。もちろん,何がいつ起こるのかわからないのが政治の世界ということで,安倍首相,働き方改革などいくつかの重要法案を通したら,臨時国会終盤には解散に打って出るということもあるのかなぁ,くらいに勝手に想像していました。ところが,所信表明演説もせずにいきなり解散とは! ライバル政党の態勢が整わぬうちにという腹なのでしょうが,こうなってくると解散の大義などどこにもありません。

ということになれば,本来は野党がもっとしっかりしていなればならないのですが,最大野党の民進党がとんでもないドタバタ劇を演じています。不人気な自分の党(民進党)からの公認ではなく人気がある別の党から公認してもらって選挙を戦う,その代わり選挙資金は自分の党の政党交付金を使う,という仕掛けのようです。「希望の党」の公認,でも本籍は「民進党」の候補者(!?)が大量に出てくるようです。政治理念や政策は二の次,ともかく当選したい,議員バッチを守りたいとあがく彼らの姿を「蜘蛛の糸」の犍陀多(かんただ)のようと揶揄する人がいますが,本当に浅ましい限りです。ドタバタ劇の共演者,希望の党にも何の“希望”も見出せません。小池都知事は,民進党議員を“選別”する言い訳として,安全保障,憲法観が一致することは前提条件などともっともらしいことを言っていますが,そもそも様々な考え方を持つ議員がいる民進党との合流を受け入れたのですから,今さらそんなことを言ってみても,民進党の組織票,政治資金が欲しいだけ,ただの“野合”ではないかと批判されても仕方ないでしょう。

過去にはもう少しマシな新党が存在したように思います。「新自由クラブ」,「新党さきがけ」は,どちらも自民党内の改革グループが中心になって作られた政党でしたが,前者は中選挙区制度のもとで保革の中間の立ち位置を模索し,後者は保守でありながら環境施策の重視などリベラル色を出すという具合で,なかなか面白い存在でした。少なくとも,議員バッチを守るためだけに行動している(としか思えない)今の政治家とは違いました。新自由クラブの結党は1976(昭和51)年秋のこと。ちょっと脱線しますが,この党の初代代表だった河野洋平氏は高校の先輩になります。私が高校1年の時,確か総選挙の直前に来校して,講演をしてくれたことがありました。人の講演,講話に感銘を受けたという経験はあまりないのですが,この時の河野氏の話はよく覚えています。行き詰ってしまったとき,ポケットにしまっておいたミカン箱(?)を取り出し,その上に立って周りをみてごらん,物事が違ってみえるようになる,といったそれ自体は他愛のない話だったのですが(書いていて,話の中身については少し自信がなくなってきました…(笑)),当時の彼は40代前半,ハンサムで,颯爽としていて,そして,何より言葉に力がありました。政治家というのは大したものだ,と感心したことだけは間違いなく覚えています。

今月22日,総選挙が行われます。候補者その人の言葉が胸に響いてくることが,はたしてどれだけあるでしょうか。(野)