〔lawyer’ blog〕✍ バニラ・エア問題と「さようならCP」

少し前のことになりますが,地方の空港で飛行機に乗ろうとした車椅子の男性が,車椅子のまま搭乗することを拒否され,腕の力でタラップを這い上がることになったという報道がありました。マニュアル通りの対応をしたLCCの地上スタッフの行動について,もう少し柔軟に対応できなかったものかと感じた人は多かったのではないかと思います。ただ,そのこと以上に私が気になったのは,搭乗を拒否されて自力でタラップを這い上がった男性に対し,“プロ障害者”,“クレーマー”といった批判がネット上にあふれたことでした。

この車椅子の男性のHPを見てみると,自ら“空飛ぶ車椅子”と称し,世界中を旅行してバリアフリーの事情を見聞きし,その体験にもとづいて色々な意見を発信されている方のようで,今回の出来事についても,事前に車椅子での搭乗を知らせていなくても対応できる空港,航空会社であるべきとの信念を持って行動されたようです。こうした行動に対しては,この国は非常に保守的,拒否的な反応をしがちなように思います。そして,そうした意識は自分の片隅にも確かにあって…

そんなことを考えているうちに思い出したのは「さようならCP」という映画のことでした。「極私的エロス」「ゆきゆきて,神軍」で知られる鬼才原一男監督の第1作。脳性麻痺を抱える障害者の急進的な団体「青い芝の会」のメンバーの生活,運動を追ったドキュメンタリーです。40年以上も前の映像なのですが,今回のバニラ・エアの一件が起きてみると,当時と比べれば別の世界に思えるほどバリア・フリー化が進んだ今でも,障害を持つ人を自分とは異なる存在と意識してしまう瞬間が当時と同じようにまだあるのだと考えさせられました。学生の時,所属していたサークルでこの映画の自主上映会をやろうということになり,16mmのフィルムを借りてきて大学の教室で1度見た切りなのですが,自分の意識下にあるものを抉られるようなインパクトのある映像の連続だったことを覚えています。長く幻の映画と言われていたようですが,今はDVDが販売されているようです。