〔lawyer’ blog〕✍ レンコン畑と「暗い時代の人々」

先週土曜日,「スーパーひたち」に乗って福島のいわきまで行ってきました。途中,土浦のあたりだったでしょうか,一面にレンコン畑が拡がっていて,よく目を凝らしてみると,緑の葉の間に隠れて白いハスの花がたくさん咲いていました。ハスの花,この時期に咲くのですね。

上野からいわきまでは特急でも2時間半近く。往復する間に本を1冊読み終えました。森まゆみさんの「暗い時代の人々」です。まえがきには「近年,アメリカに追随する政策や再軍備化,憲法改正と集団的自衛権の行使に向けた下準備が次々と推し進められていることに対しては,率直に怖い,という感情を持っている。そんな時代だからこそ,わたしは,大正から戦前・戦中にかけて,暗い谷間の時期を時代に流されず,小さな灯火を点した人々のことを考えていきたい」とあり,斎藤隆夫,山川菊栄,山本宣治,竹久夢二,古在由重など9人の人物の生きざまが描かれています。人物評伝というほどのボリュームはないけれど,彼らがあの暗い時代をいかに良く生きようとしたかは十分に伝わってきました。なかでも文化新聞「土曜日」を作った大部屋俳優斎藤雷太郎のことは,これまでまったく知らなかったこともあって,面白く読ませてもらいました。京都のフランソア,行かなければ。

安倍政権のもとで進められてきた諸政策によって「大阪城の外堀どころか,内堀も埋められ始めているような気がする」と森さんは言います(私も同感です)。そして,森さんは,あとがきで,マルティン・ニーメラーの詩を紹介しています。

ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき,私は声をあげなかった
私は共産主義者ではなかったから

社会民主主義者が牢獄に入れられたとき,私は声をあげなかった
私は社会民主主義者ではなかったから

彼らが労働組合員たちを攻撃したとき,私は声をあげなかった
私は労働組合員ではなかったから

そして,彼らが私を攻撃したとき 私のために声をあげる者は,誰一人残っていなかった

                                                

 

〔lawyer’ blog〕✍ “ゼロ・アワー”

昨年まで在籍していた事務所はさいたま地裁の近くにあったので,1日に複数の案件が入っていても,その都度,事務所と裁判所との間を往復していました。しかし,移籍したこの事務所からは,さいたま地裁まで片道40分,往復1時間半をみておかないといけません。なるべく待ち時間ができないようスケジュールを調整するようにしていますが,どうしても間が空いてしまうことがあります。時間つぶしには読書を,ということで,鞄の中には必ず本を数冊入れておくようになりました。

ちょっとした空き時間に読むとなるとエッセイとか新書になってしまいがちですが,最近,テンポ良く読み進めることができたのがこちらの小説。作詞家の売野雅勇さんが何かのラジオ番組で文章のリズムが良いというような話をされていたのを聞き,書店で見つけて手にしてみました。シェイクスピアの作品の登場人物の名前や台詞が散りばめられていたり,タンゴの名曲が自然とBGMになっていたり,作品としての完成度が高いとは正直思いませんでしたが(最終章は要らないよなぁ),最後まで一気におもしろく読むことができました。特に,ロミオとハムレットがミロンガを踊るシーン,二人の心理描写を書き分けているところは秀逸でした。

この本を読んでから,久しぶりにタンゴを聴きました。アストル・ピアソラの「Tango;Zero Hour」。中山可穂さんの小説と同じタイトル。いいですね! このアルバムが出た時,日本はバブルの真っ只中。社会人になったばかりの私は,バブルの最後のおこぼれを頂戴した程度でしたが,様々なジャンルの一流ミュージシャンが来日してライブを演ってくれました。ピアソラも行くチャンスはあったんですよね。すごく後悔しています。