〔lawyer’ blog〕✍ 世界フィギュア

年度末の3月はタダでさえ慌ただしいのに,個人事業主にとっては確定申告という別の“苦行”が待っています。普段から資料整理を心掛けておけば何てことはないはずなのですが,どうせお金を納めるだけなんだからと考えてしまうと手が止まってしまいがち。届いていたはずの生命保険料の控除証明書が見あたらない,クレジットカードの利用明細をネットで取ろうとしたら1年前までしか取ることができないなど,今年もドタバタしてしまいましたが,何とか期限内に申告を終えることができました。

ほっとしたところで,連休の合間,さいたまスーパーアリーナで行われた“世界フィギュアスケート選手権”を見に行ってきました。海外歌劇団のオペラ公演並みのチケット料金に驚きましたが,世界フィギュアの日本開催は5年振り,次のチャンスがいつになるかわかりません。ブレイク中の紀平梨花さんの演技も見ておきたかったので,思い切って購入しました。フィギュアスケートの生観戦は初めて。リンクサイドからちょっと離れた席で,選手の表情はオペラグラスを使わないとわかりませんでしたが,スケートのエッジが氷を削る音が時折聞こえてきたりして臨場感は十分でした。

びっくりしたのは女性の観客の多さ。8割近くが女性で,年代も10代から60~70代まで様々。“お一人様観戦”らしき人もたくさんお見受けしました。さらに,彼女たちの“フィギュア愛”の深さには驚かされました。どの国の選手でも良い演技をすればスタンディング・オベーション,惜しみない拍手を送り,ミスをしてしまった時には一緒になってがっかりする。わずか数分の演技にすべてを賭ける選手たちの想いをしっかり受け止め,これに声援で応える彼女たちの姿は,日本選手の活躍だけを殊更に取り上げるメディアの姿勢とは全く違っていました。また,機会があったらフィギュア観戦,してみたいと思います。

 

 

 

 

3月15日(金) 関東弁護士連合会主催:シンポジウム 映画「ほたるの川のまもり人」から改めてダム問題を考える のご案内

 長崎県の川棚町で半世紀前から建設が計画されている石木ダムの問題を通して,今,改めてダム問題を考えようというシンポジウムが関東弁護士連合会の主催で行われます。当日は,第1部が石木ダムの建設予定地となった小さな集落で暮らす人々の生活を追ったドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもり人」の上映会,第2部はこの映画を撮った山田英治監督のトークショ-となっています。八ッ場ダム住民訴訟を一緒に取り組んだ弁護士から“拡散”を依頼されました。ダム問題に関心をお持ちの方だけでなく,多くの皆さまに参加いただきたいと思います。

【日 時】 3月15日金曜日 午後6時開場,午後6時40分映画上映

【会 場】 日比谷図書文化館 日比谷コンベンションホール(大ホール) ※ 日比谷公園内

      問い合わせ先:関東弁護士連合会事務局 電話03-3581-3838

3月12日(火)埼玉弁護士会主催「憲法と人権を考える市民の集い」のご案内

埼玉弁護士会が主催して毎年この時期に行っている「憲法と人権を考える市民の集い」ですが,今年は3月12日(火)午後6時30分から埼玉会館小ホールで行われます。当日は,“戦場カメラマン”としてお馴染みの渡部陽一さんが「テレビでは報道されない戦争の悲劇と現地の人々の声」というテーマで講演をされます。また,埼玉弁護士会では,昨年10月,自衛隊を憲法に明記する憲法改正に反対する総会決議を挙げており,この内容を踏まえた基調報告をさせていただく予定です。多くの皆さまのご参加をお待ちしています。

 

 【日 時】 3月12日(火) 午後6時開場 
            午後6時30分開演 
 【場 所】 埼玉会館小ホール

  *入場料は無料,事前申込みは不要です。

 
 【問合せ先】埼玉弁護士会
    TEL:048-863-5255

〔lawyer’ blog〕✍ 何という試合! 

気がついたら1月も残すところ1週間。新年になってからブログを更新しないまま3週間も過ぎてしまいました。といってもボーっとしていたわけではありません。2日の夜から3日にかけて「当番弁護士」の待機日。いつ出動の要請があるかわからないため,遠出をすることはできませんし,かといってお酒を飲みながら箱根駅伝をテレビ観戦するというわけにもいきません。4日に勾留満期を迎える被疑者国選弁護の事件も抱えていたため,正月気分を味わうことなく,なし崩し的に新年の仕事をスタートさせたのでした。

猪年なのでこのまま突っ走ろうかと思っていたところ,先週末に風邪をひいてしまってあえなくダウン。鼻水をすすりながら見たのが全豪オープンテニスです。グランドスラムの5セットマッチ,3時間を超えることも珍しくない男子の試合となると,試合開始からゲームセットまで通しで見ることなど滅多にありません。でも,風邪で思考力が著しく低下してしまってはほかにすることもなく,ソファーに横になりながら,WOWWOWで何試合か見てしまいました。フェデラーとツチパスの新旧対決は見応えがありました。10数本あったブレークポイントを凌ぎ切り,サービスゲームをすべてキープしてフェデラーを倒したツチパスのプレーの質には正直驚きました。ズベレフ,ティエム,ティアフォーなどの次世代エース候補の中から頭一つ抜け出したように思います。ネットプレーがもう少しうまくなれば,近い将来,間違いなく4大タイトルを手にすると予想します。甘いマスクで人気も出そう。

しかし,何より興奮したのは錦織圭とブスタの試合でした。2セットダウン,第3セットもタイブレークまで追い詰められましたが,そこを何とか切り抜け,2セットを挽回。ファイナルセットでは,ここを取れば勝利という第10ゲームのサービスゲームをブレークされる嫌な展開になり,10ポイント先取のタイブレークに入ってからもミニブレイクを先行され,5-8と3ポイント離された時はここまでかと思いました。そこから粘って5ポイントを連取するとは! 一昨年,右手首の腱を部分断裂するという大けがを負った時には,もう彼にはグランドスラムのタイトルを取るチャンスは巡ってこないのではないかと思っていたのですが,けがからは完全に復調し,体もひと回り大きくなったような気がします。弱点だったサーブもずいぶんと強化され,サービスゲームを安定してキープできるようになったのは大きい。今年は,もしかすると,もしかするかもしれません。錦織くんのプレーに熱中するうち,風邪はすっかりよくなったようです。

【注目判例】共同相続人間でなされた無償の相続分の譲渡は“生前贈与”にあたるとされた事例:最高裁H30.10.19判決

事案の概要

 上告人Xは,被上告人Yとともに,B(父)・A(母)夫婦の子です。B・A夫婦の間には,もう一人の実子C,さらに,B・A夫婦と養子縁組をしたYの妻Dがいます。このような親族関係の下,まず,Bが平成20年12月に死亡しました。亡Bの遺産をめぐって遺産分割調停が申し立てられ,分割合意が成立する前に,Aと養子Dの二人は,それぞれ自分の相続分をYに無償で譲渡して調停手続から脱退しました(A,Dの手続からの脱退により,亡Bの遺産については,X,Y,Cの3者間において遺産分割調停手続が進められ,平成22年12月に遺産分割調停が成立しました)。その後,Aは,平成22年8月,全財産をYに相続させる旨の公正証書遺言を作成しました。
 亡Bの遺産相続をめぐって以上のような経緯があった後,平成26年7月,今度はAが亡くなりました。死亡時,Aには介護費用の債務とほぼ同額のわずかな預金しかありませんでした。しかし,Aは,前述の通り,生前,Bの相続分を無償でYに譲渡しています。この相続分の無償譲渡は民法903条1項が規定する贈与にあたり,これによって自己の遺留分が侵害されているとして,XがYに対して遺留分減殺請求を行ったというのが本件事案になります。
 原審・東京高等裁判所(平成29年6月22日判決)は,ア)相続分の譲渡による相続財産の持分の移転は,遺産分割が終了するまでの暫定的なものであり,最終的に遺産分割が確定すれば,その遡及効によって,相続分の譲受人は相続開始時に遡って被相続人から直接財産を取得したことになるから,譲渡人から譲受人に相続財産の贈与があったとは観念できない,イ)相続分の譲渡は必ずしも譲受人に経済的利益をもたらすものとはいえず,譲渡に係る相続分に経済的利益があるか否かは当該相続分の積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定しなければ判明しないなどとして,本件相続分譲渡は,その価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与(民法1044条,903条1項)には当たらないと判断し,Xの請求を斥けました。
 今回は,Xの上告受理申し立てに対して最高裁が示した判断を紹介したいと思います。

裁判所の判断

 

〇 共同相続人間においてされた無償の相続分譲渡は民法903条1項に規定する「贈与」にあたるか
 「相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡人から譲受人に対し経済的利益を合意によって移転するものということができ」,「遺産の分割が相続開始の時に遡ってその効力を生ずる(民法909条本文)とされていることは,以上のように解することの妨げとなるものではない」から,共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項に規定する「贈与」に当たる。

解説

 

◇ 遺留分について
 「遺留分」とは,兄弟姉妹以外の法定相続人について法律で保障されている最低限度の相続分といいます。被相続人が法定相続人にとって非常に不公平,不平等な遺言や生前贈与をした場合,この遺留分の限度で,遺産の一部を取り戻すことができるという仕組みです。遺留分が保障されている法定相続人(遺留分権利者と言います。)は,①配偶者,②子ども,③父母・祖父母など直系尊属です。②の子どもには,実子だけでなく養子も含まれますし,子がすでに亡くなっている場合の代襲相続人にも遺留分が認められます。他方で,被相続人の兄弟姉妹は,第3順位の法定相続人ですが,法律上,遺留分は認められていません(民法1028条)。相続財産に対する遺留分全体の割合は,原則として2分の1です。直系尊属(父母,祖父母)だけが相続人となるというパターンのときだけ,例外として3分の1が遺留分となります。遺留分権利者が複数いる場合には,この遺留分割合を各相続人の法定相続分で配分します。
  本件の事案は,子どものみが相続人となるケースとなるので,相続財産に対する遺留分全体の割合は2分の1となります。そして,Aの子は,X,Y,C,Dの4名いますから,各自の遺留分は1/8(1/4×1/2)ということになります。

◇ 遺留分の基礎となる財産
 遺留分を計算するには,まず,遺留分の基礎となる財産を確定させる作業が必要になります。
 遺留分は,「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除して,これを算定する」とされています(民法1029条)。つまり,ア)相続開始時に現存している財産に,イ)生前に贈与した財産を加え,そこから,ウ)債務を差し引いたものが,遺留分を計算する際の基礎となる財産ということになります。
 イ)の「生前に贈与した財産」にどこまでの範囲のものが含まれるかについては,相続人以外の第三者に贈与した財産と,相続人に生前贈与した財産とに分けてみておく必要があります。相続人以外の第三者に贈与した財産については,原則として,相続開始前1年以内に贈与されたものに限って遺留分算定の基礎となる財産に算入するということになっています。但し,1年以上前に贈与したものであっても,贈与当事者の双方が遺留分権利者に損害を加える結果となることを知って贈与したものは,基礎となる財産に算入することになります(民法1030条)。これに対し,相続人に生前贈与した財産については,それが民法903条1項が規定する『特別受益』に該当する贈与といえる場合には,1年以上前の贈与であったとしても,遺留分を計算する際の基礎となる財産に含めることとされています(最高裁平成10年3月24日判決)。なお,特別受益にあたらない贈与については,民法1030条に従って処理されることになります。

◇ 特別受益とは?
 特別受益に該当する贈与とはどのようなものでしょうか。この点について民法は,「共同相続人中に,被相続人から,遺贈を受け,又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるとき」を特別受益としています(903条1項)。「遺贈」とは遺言によって遺産を無償で他人に譲渡することです。特定の相続人に遺贈を行うとすべて特別受益になります。「婚姻若しくは養子縁組のために受けた贈与」は,“持参金”,“支度金”といったものがこれに該当します。「生計の資本として受けた贈与」としては,例えば,子どもが独立をした時に贈与した不動産,あるいは不動産の購入費用などが典型的なものとなります。子どもの学費については,高校の学費までは親の子に対する扶養義務履行の範囲内とされ,特別受益にはあたりません。 特別受益にあたる贈与があるケースでは,贈与による利益を受けた相続人(受益者)から相続分を減額することになります。減額の方法として,特別受益の持ち戻し計算というものを行います。これは,死亡時に残された遺産に受益者が受けた贈与分を加えて“みなし相続財産”というものを想定し,ここから法定相続分に従って遺産配分をするという計算方法になります。こうした特別受益の制度は,生前贈与や遺贈をした被相続人の意思を尊重しつつも,生前贈与や遺贈の「持ち戻し」をすることにより,法定相続分に修正を加えて相続人間の実質的な公平を保とうとする仕組みになります。

◇ 相続分の無償譲渡は民法903条1項の特別受益に該当する贈与にあたるのか
 特別受益の仕組みを規定している民法903条1項の条文は,先ほど見ていただいたように「贈与を受けた者」となっているので,相続分を無償で譲り受けた者をこれと同じに扱うべきかについては争いがあり,下級審の裁判例も結論が分かれていました。本件の原審(東京高等裁判所・平成29年6月22日判決)は,冒頭で述べたようにこれを消極的に解した訳ですが,同じ東京高等裁判所の別の判決では,相続分の無償の譲渡によって「財産的価値の増加があるのであるから,相続分の譲渡についても特別受益としての生計の資本の贈与に該当し得る」と本件原審とは異なる判断が示されていました(東京高裁・平成29年7月6日判決:判例時報2370号31頁)。最高裁がどちらの解釈を支持するか注目されていた訳ですが,相続分の無償譲渡は原則として民法903条1項の特別受益にあたる,ただ,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合は例外的に特別受益にはあたらない,という判断基準が示されたのです。

コメント

今回の最高裁判決により,相続分の無償譲渡は原則として特別受益に該当するということになったので,相続分の譲渡を検討する際には,相続人となることが予定される者の遺留分を侵害することがないかを考慮する必要があります。また,今回の事例は共同相続人の間で相続分の譲渡が行われたというものでしたが,遺産分割協議や遺産分割調停によってBの遺産に関するAの法定相続分をYに取得させるという合意が成立することもあります。その場合,やはり特別受益の問題が生じることになるのかは残された課題となります。

冬期休業のお知らせ

誠に勝手ながら,12月27日(木)から1月6日(日)まで冬季休業とさせていただきます。1月7日(月)午前10時から通常営業となります。

メールでのご連絡,お問い合わせについても,年明け7日からの対応となりますことをご了承ください。ご不便をおかけしますが,よろしくお願い致します。

12/16(日)「荒れる気候の時代に 命を守る水害対策を考える」のご案内

八ッ場ダムの本体工事中止を求めて住民訴訟を一緒に闘った「八ッ場あしたの会」の皆さんが,今年7月の西日本豪雨水害を受け,河川行政の転換を求める集会を企画されました。

八ッ場ダム住民訴訟で私たちは,ダムに頼った治水対策は効果的なものとは言えず,堤防の強化など別の治水対策に力を入れるべきであることも指摘してきました。最近の水害の激甚化は,これまでの治水対策に問題があったことを浮き彫りにしています。

今回の集会には,滋賀県知事の時代,6つのダム計画を凍結し,流域治水条例を全国に先駆けて制定した嘉田由紀子さん,八ッ場ダム住民訴訟を支えてくださった水源開発全国連絡会代表の嶋津暉之さんらがゲストとして参加されます。師走の日曜日の集会になりますが,関心がある方は,ぜひご参加ください。

【日時】12月16日 日曜日 午後1時半~  【会場】全水道会館(水道橋) 4階大会議室

 

10月31日(水)埼玉弁護士会主催「外国人学校を考える ー朝鮮学校の高校無償化排除・補助金支給停止問題を中心にー」のご案内

埼玉弁護士会が主催するシンポジウム「外国人学校を考える -朝鮮学校の高校無償化排除・補助金支給停止問題を中心にー」が,今月31日午後6時から埼玉会館小ホールで行われます。外国人学校の現状やそれを取り巻く問題点について,特に朝鮮学校への補助金不支給問題を中心に考えていきます。当日は,元文部科学事務次官の前川喜平さんの基調講演のあと,前川さん,一橋大学名誉教授田中博さんらをパネラーとしたパネルディスカッションを予定しています。多くの皆さまのご参加をお待ちしています。

 【日 時】 10月31日(水)午後6時~   
 【場 所】 埼玉会館小ホール

  *入場料は無料,事前申込みは不要です。

 
 【問合せ先】埼玉弁護士会
    TEL:048-863-5255

9/15(土) 第61回日本弁護士連合会人権擁護大会プレシンポジウム 「多文化共生のために~教育の現場から~」

第61回日本弁護士連合会人権擁護大会のプレシンポジウム,「多文化共生のために ~教育の現場から~」が,9月15日の土曜日に埼玉会館で行われます。

日本で暮らす外国籍の方の数は250万人を超え,県内でも17万人の外国籍の方が暮らしています(全国第5位)。もちろん,そのなかにはたくさんの子どもも含まれています。学校,進学の場面,地域社会,家庭と様々な場面で苦難に直面することのある「外国につながりのある子ども」について,教育現場における課題や支援のあり方を広く市民の方々に知っていただき,今後の施策について考える場としたいと思います。多くの皆様の参加をお待ちしています。

【日  時】 2018年9月15日(土) 
    14:00  開演(13:30開場)
【場  所】 埼玉会館3階 3C会議室
【申  込】 不要
【参加費】 無料
【お問合せ先】 埼玉弁護士会
     TEL:048-863-5255

※ 当日は,手話通訳も用意しています。

夏季休業のお知らせ

誠に勝手ながら,8月13日(月)から17日(金)までの間,夏季休業とさせていただきます。
20日(月)から通常営業となります。
ご迷惑をおかけしますが,よろしくお願いいたします。